素敵な引き合わせ

くまがいさんとの出会いは素敵な引き合わせからでした。六本木グランドハイアットで大将として握っていた時代にハスミワインを使って頂いており、あまりの美味しさに感動。その後独立し、客人として訪れた貝掛温泉の若女将とハスミワインの話になり、是非取引したいとなりお付き合いが始まりました。そうして鮨職人になろうとしたのですか？との問いに「お客様が喜んで食べる姿を直接見られるから」と穏やかでにこやかな顔で答えてくれます。

醤油さしは存在しない

くまがいさんのカウンターには醬油さしは存在しません。全ての握りに醤油をつけず頂くように味を完成させて提供されます。醤油をつけようとすると引っくり返して付けにくかったり、付け過ぎてしまったり、また醤油を付ける行為で話の腰が折れてしまったりすることを避ける為、であるとの事です。場所柄、外国のお客様も多いので、醤油を付ける行為が無い方が食べやすく、あらゆる人々がリラックスして食べられる姿を目指しての結果でした。握りと握りの間に小さなお料理を出してくれますが、これもお酒を飲む飲まないに関わらず、生魚が続いて身体が冷えないようにとの配慮からです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　清潔で整然としたカウンター、氷で保冷する方式の冷蔵庫を黒塗りのモダンにしつらえている店内に座ると、気持ちの良いキリッとした緊張感を感じ、これから始まる大将の技と世界を楽しもうと背筋が伸びます。一方で暖かいまなざしで挨拶をしてくれる大将の言葉と雰囲気で一気にリラックスして身を委ねて楽しもうとする空気に包まれる。くまがいさんに行きゃなきゃ、くまがいさんに行きたいな、と一度伺ったら必ず思わせる緊張感と柔らかさが同居する都会の隠れ家です。